初めまして。昨年から川崎グループに入りましたM2の五十川(いそがわ)です。
4/23・24に開催されたアジア・太平洋水サミット(詳細は中村さんの投稿を参照)で熊本に訪れたついでに,25・26日にかけて2年前の豪雨災害を受けた球磨川流域と川辺川ダム建設予定地,建設の際に「蜂の巣城紛争」が起こった下筌ダムを訪れました。
コロナの影響もあり,個人的には研究室配属から3年目にして初の現地視察となりました。
◆25日:球磨川流域,川辺川ダム
池内グループM2の鈴木くんが強力な助っ人としてこの日から同行することに。
まずは球磨川を下流から上流部へと沿うようにして走りました。
下流域の八代市街地に訪れるまでは豪雨被害をあまり感じさせない状態でしたが…
いざ河川沿いを走ると状況は一変。2年前の豪雨災害とはいえ,路面崩落等による車線規制や河道内での工事は今もなお広範囲に渡り続いていました。土砂が積まれたトラクターや工事用車両が多く走っているのを見て,まだ完全に復興したとはいえない状況に何とも歯痒い気持ちでいっぱいでした。
さらに,並走するJRの線路が無残な状態のまま手がつけられていないのを見て,民間インフラ存続の厳しさを目の当たりにしました。被災前はSLが走っていたらしく,川沿いを走りながらSLが走る写真を見ると,何とでも復旧してほしいと感じました。
線路が隠れて見えない |
他にも,仮設橋が至るところに見られたり,周囲の建物には水位上昇の跡がくっきりと残っていたりなど(場所によっては3mあるところも),被害の深刻さを改めて認識しました。ただ,その中にも一歩一歩着実に復興に向かって進んでいるのも実感し,何とか頑張ってほしいと心から願うばかりでした。
次に,人吉市街へ。復興のシンボルとして昨年オープンしたHASSENBAで昼食をとり,1669年の洪水の痕跡が残る青井阿蘇神社へ。
球磨川を後ろに(@HASSENBA) |
過去の洪水の記録が残る青井阿蘇神社では,令和2年豪雨被害の写真が展示されており,人吉市周辺の当時の状況を事細かに知ることができました。
欄干が途中からなくなっている |
この日最後の目的地として川辺川ダムの建設予定地に訪れました。令和2年豪雨による人吉市内での被害を受け,一度建設事業が中止されたものの再び建設に向けての議論が進む,非常にセンシティブな課題を持つ川辺川ダム。実際のダムの大きさが想像より大きく,球磨川流域には実際建設されたもののその後撤去された荒瀬ダム跡を訪れただけに,ダム建設における必要性について運用上の効果や水没対象となる地域の方の意見等を含み,建設の是非について深い議論の必要性を改めて感じました。
川辺川ダムの堤体はこの辺りにできるらしい |
◆26日:下筌ダム
この日は朝から天候が悪く,泊まっていたホテルの前に植わっていた木が倒れるほど(!)風雨が強い1日でした。
かつて蜂の巣城紛争と呼ばれる,日本最大級のダム建設反対運動が起こった下筌ダムの見学に訪れました。ダムに行く道すがら資料館に立ち寄りましたが,あいにくの休館日…。この日はダムカレーのお店も定休日で,残念…!またリベンジしたいですね。
まず制御室の中に入り,管理事務所の方によるダム運用の現場について説明を受けました。ここでは令和2年豪雨による下筌ダムの緊急放流等,ダム運用に取り組む方の貴重なお話を伺うことができました。さらに,建設反対派の集落となる蜂の巣城の変遷や紛争の過程について詳細に学びました。
様々な説明を受けたあと,いよいよ実際の堤体内へ。
間近より眺める |
悪天候のため残念ながらキャットウォークには入れませんでしたが,それでもこの規模感にただただ圧倒されていました。
なんとこんな場所まで!
コンジットゲート |
堤体が風除けとして機能したのか(?),風雨に曝されず平穏に見学できました。
個人的にはダム見学自体が初めてだったので,講義や事前調査等で実感が湧かなかった部分が鮮明になり,大変意義のある見学でした。ダムをこよなく愛する鈴木くんが圧倒的な知識をもとに色々質問していたのが印象的で,実際に訪れて詳しく知ることで確かにハマりそうだな,と思いました。笑
この場をお借りして,丁寧なご説明とダム内部の見学の機会を賜り,下筌ダム管理支所の皆様に感謝申し上げます。
熊本滞在もこの日で終わることもあり,ダム見学後はおいしいものを食べました。
どこからどう見てもおいしいもの |
空港に向かう道中には2016年の熊本地震で落橋した阿蘇大橋の一部分や,復興のシンボルとしての新阿蘇大橋,現在建設中の立野ダムなど,土木者として・社会基盤を担う人として様々感じる場所が見受けられました。話は変わりますが,水サミット開会式で熊本市長が涙ぐみながら熊本地震・熊本豪雨からの復興への支援に感謝の意を述べていたのが僕にはかなり印象的でした。水サミットや今回の現地視察を通し,土木・社会基盤としての立場から自分は何ができるのか,何が問題でどのように乗り越えなければならないのかを改めて考えさせられる機会となりました。自分自身の研究が少しでも,どこかに希望を見出せられるように,これからも励んでいきたいと感じました。
最後に,このような貴重な機会をくださった先生に感謝します。ありがとうございました!
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